わが国経済は深刻な人手不足に直面しており、特に小規模事業者にとって、これは大きな経営上の不安要素となっています。
「三方良し※」という近江商人の経営哲学が有名ですが、昨今では、さらに従業員など「働き手」の満足度も考慮した「四方良し」が求められる時代になってきたとも言われています。
事業経営を安定的に続けていくためには、人材の採用と定着に戦略的に取り組むことが重要といえます。
※三方良し:売り手良し、買い手良し、世間さま良し、の三者が満足する状態のこと
◎人手不足の要因と対策の方向性
■ 不足要因 ■
退職・離職による欠員だけでなく、仕事量の急な増加・顧客ニーズの多様化・新事業展開などによる事業拡大といった様々な要因があります。
■ 解消対策 ■
新たな人材採用による人員補充だけを考えればよいのでなく、働く人が気持ちよく働き続けられる職場環境の整備や、業務の見直し・設備の導入による生産性向上など、人材定着化への対応も重要となります。
◎採用段階: 期待を明確に・固定観念をとり去る
求める人材像の明確化:
採用活動の課題は、どのような人材を「求める(期待する)人材像」として設定するかです。
会社側が採用予定者に期待する、仕事内容、役割、能力・スキル、資質、仕事に対する価値観などを具体的に明確化することで、応募者の職務能力や希望条件とのミスマッチを防ぎます。
条件の緩和・拡大: 働きかた改革
「経験者のみ」「フルタイム」「男性のみ」といった固定観念にとらわれず、短時間勤務、副業・兼業、シニアなど多様な人材活用や働き方も採用対象に含めることで、採用の幅が拡がります。
◎定着化: 人材定着のための「働きやすさ」と「働きがい」
せっかく採用した人材がすぐに離職してしまうことは、会社にとって大きな痛手です。
人材を会社に長く定着してもらうためには、以下の2つの取組みが有効と考えられています。
1. 「働きやすさの実現」につながる取組み:
- コンプライアンス遵守:
労働基準法をはじめとする労働関連法規の遵守は最低限の条件です。
不信感を与えない健全な労働環境を提供します。 - 働き方改革:
長時間労働の削減、有給休暇の取得促進、勤務間インターバル制度、同一労働同一賃金など、多様な働き方を可能にする制度導入を検討します。 - ワーク・ライフ・バランス:
フレックスタイム制、短時間正社員制度、テレワーク、選択的週休3日制の導入など、仕事と生活の両立を支援する環境を整備します。 - 健康経営:
従業員の健康管理を経営的視点から捉え、積極的に従業員の健康保持・増進の支援に取り組むことで、生産性向上や採用力アップにもつながります。
2.「 働きがいの向上」につながる取組み:
- 人事評価制度(適切に評価し、やる気を応援する):
公平性・透明性・納得性のある評価制度を導入し、定期的なフィードバックを通じて、従業員のモチベーション向上と成長を促します。 - 人材育成(研修制度など):
OJT(職場内訓練)やOff-JT(座学研修)、自己啓発支援を通じて、従業員の能力開発とキャリアアップを支援します。 - 経営理念の浸透(価値観を共有する):
会社の存在意義やビジョンを共有し、従業員が事業に共感し、主体的に貢献する意欲(エンゲージメント)を高めます。 - コミュニケーション(風通しを良くする):
上司と部下、同僚間の円滑なコミュニケーションを促進する取り組み(意見交換会、社内SNS、交流イベントなど)を通じて、心理的安全性の高い職場環境を構築します。
近年深刻化する人手不足への対応として、求める人材像の明確化、採用戦略、そして人材定着に繋がる「働きやすさ」と「働きがい」のある職場環境を作りあげる努力が重要ということになります。